海外生活のおしえ〜空の旅編〜

先日クライアントさんとのセッションで「海外生活で大変なこともあると思うのですが、どうやって乗り越えたんですか?」という質問を頂きました。チェコに住み始めて4年強。必死すぎてあまり振り返ったことすらなかった…。

色んな珍事件があったはずなのですが、過ぎてしまうとすごく小さな出来事だったかのように思ってしまうタチ。いい機会だから私がこの4年で学んだ ”海外でこれは大事” みたいなものを、出来事ベースで振り返ってみたいと思います。 書いていたらたまたま全て空港がらみだったので、空の旅編とさせていただきます。

Case 1. ワルシャワ事件 

日本とチェコ間は直行便がないので乗継必須です。この時は日本からチェコに戻る日で、乗継@ワルシャワ空港。この2国間の往復にも大分慣れてきていた私は、乗継時間55分という結構チャレンジングな便をとっていました。 

欧州の場合入国審査はEU圏に入るタイミングで行われるので、ここで列に並ぶ必要がある。分かってはいたけど乗継時間はタイト。そしてその日は運悪く8月末で、夏休みから自国へ戻る人々で長い列ができていました。 

一応ワルシャワにも地上スタッフがいて、乗継が厳しそうな便に関しては呼びかけを行っていましたが、私の便はなぜか呼ばれない。

不安になった私は近くにいた若い地上スタッフに「この便に乗るんだけどこの調子だと間に合わない。列の前に入れてくれない?」とお願いしたところ、「あなたの便はまだ搭乗始まってないから大丈夫!(スマイル)」とのこと。

時間は刻々と進むけど、地上スタッフがそういうのなら大丈夫かな…。 

と、素直に並んだ私がバカ中のバカであった。 

入国審査、二度目の保安検査を終えてゲートに到着したところ、ポーランド航空のお姉さんがクールな顔で「ゲートもう閉まったわよ」と。 

いやいや、それはなかろう。私はスタッフにも確認した上で大丈夫だと言われてきたんです。飛行機に乗せてください! 

ガチで交渉したけれど、「バスがもう出てしまったので…マダム、私にはできることがありません。あちらのデスクで次の便に振り替えて」と、完全拒否。もう出来ることがないって…そもそも何もやろうとしてないっすよね⁉︎ 

日本では絶対に起こらないような対応にただただ開いた口が塞がらない。地上を走り回って連携をとってくれる日本の地上スタッフの皆さんが恋しい。 

怒りがおさまらない私は、振替手続きのデスクのスタッフをツメる。今思うと本当に申し訳ないことをしてしまった。これじゃ電車遅延で駅員さんに怒鳴り散らすおじさんと一緒だ…お姉さんごめんさい。怒って良いことなんて何もないのにね。。 

そして報いというものはジャストインタイムで来るもので。その行いに対する報復を私はすぐに受けることになります。

振替便(幸運にも4時間後)を待つ間ふと手元をみたら、握りしめていたはずのパスポートがない。チェコの在住カードと一緒に持っていたはずなのに、ない!

怒って鼻息荒く歩いている時にどこかで落とした模様。経由地でパスポート無くした場合など想定していなかったので、相当焦る。おそらく人生で一番焦った。

結果的に、本当に幸運なことに親切な方が拾って届けてくれていた。あの時の安堵と言ったら…涙 怒って良いことなんて、本当に何もない。肝に銘じる。 

学び

  • 彼らはできるだけ面倒なことを避けて自分の仕事を増やさないように働いているので、+αで察して動いてくれるなどということはまずない。こういうクリティカルな状況では他人の情報を信じない。自分の直感と判断を信用して情報を取りに行くこと!  
  • 確実に自分の欲しいものを得るには、目の前の人にぐうの音を言わせないほどクリアな要求をして、やりとげてもらうまで諦めない姿勢を見せることが必須(私の場合、グラウンドスタッフに航空会社と連絡をとるよう要求し、無線で連携をとるところまでやり切らせる必要があったんでしょうね…すごい労力だけど) 
  • 何どきも、怒って良いこと、何もなし。 しょうこ 
Case 2. 私の席に座っているオッサン 

乗継関連でいうと、イスタンブール乗換でもやらかしたことがあります。乗継時間が3時間もあったのでラウンジでのんびり。最後にスープ一杯でも飲んでそろそろゲートに向かおうかしら、と思って電光掲示板を見上げたところ、私の便がLast callと赤字で点滅している。 

血の気がひく。あっほーな私、ローカル時間の調整、1時間間違えたことに初めて気がつく。 

広いイスタンブール空港の端から端までを全力疾走。よく映画で人の流れに逆らって走る刑事を見るけれど、絶叫して走る私はまさにそれ。本当にそういう人いるんだ…っていうね… 

搭乗ゲートに髪振り乱して到着すると、トルコ航空のお姉さんが呆れ顔で待ってくれていた。アフターユー、ゼアイズ ノーパーソンと片言英語で叱られながら、乱れ髪のままバスで機体に到着。だいぶ前に搭乗完了してこのあっほーなアジア人を待ってくれていた全乗客の視線が痛い。 

息を必死に整えながら自分の席に到着すると、何故かそこにトルコ系のオッサンが座っている。隣の席は空席。間違えてるのかな?と思って「そこ私の席ですよ」と言ったところ、オッサンから「前の席あいてるから、そこ座れば?」との切り返し。 

前の席の隣席には、体の大きな圧迫感のある男性が座っている。 

ははーん。

…オッサン、私がこないものと思って席移動したな? 

そう察した私は、平然と私の席に居座ろうとするオッサンに一言、Sorry??と顔を近づけて言ってみた。 

そしたらオッサン、すぐにおずおず元の席に戻る。(たぶん乱れ髪×すっぴんの私が怖かったんだと思う。) 

この時Sorry?(何ていいました?)と言ったのは、実はオッサンの訛り英語を 100%聞き取りきれなかったからという理由の方が大きかった。でも自分に引け目があったオッサンは、その Sorry??を私からの純粋な質問ではなく、「ハァ?(何言ってんのあんた?)」という攻撃だと受け取ったのです。 

この一件に限らず、こういう場面には何度も出くわしました。その度に胸に刻んだ学びは「意思表示はしなかった方が負け」ということ。納得いかないと感じたならば、それはおかしいと言い切らなければならない。心では実はそう思っていました、は、ここでは成り立たない。 

移住した当初、日本で育った私はお行儀が良すぎてよく夫に諭されました。今日こんな嫌なことがあってあーだーこーだと逐一報告していたら、 必ずDid you say that to them? (それちゃんと相手に言ったの?)と聞かれました。いや、それは気が引けたから言わなかったとか、タイミング逃して結局黙ってた、というと、Then it is your fault. (じゃぁそれは君の落ち度だよ)と突き放されました。 

嫁がこんなに凹んでいるのにその突き放し方はひどい! と半泣きで訴えたこともあったけれど、 今思うと私にとっては欠かせない教育だったと思っています。夫のスパルタ指導に感謝。そのおかげでいつでも気軽にヨーロピアンモードに切り替えることが出来るようになりました。 

とある日のベルギー行きの便では、逆に私が座っていた席に「そこ私の席ですが…」と物申すイケメンスーツ男子(おそらくベルギーの方)が現れた。

「ふっ、またこのパターンか…」

そう思った私はチケットを見せながら「みて、私の席C6ですよ。」と反論。彼はスマートに、「ちょっと添乗員に確認してみますね」と引き下がった。

「これだからヨーロッパは…」

そう思っていたところ、スチュワーデスさんが全力の笑顔で近寄ってきて「マダム、C6はゲート番号ですよ。貴方様のお席は27Cです。」

誰か私を今すぐ消してくれ。

私、エコノミークラスのくせにビジネスクラスの6Cに平然と座り、かつイケメンスーツ男子にアナタ間違ってるわよ言い放っていた。(どうりで椅子がふかふかだと思った…w)フライト中ずっと気配を消し続けたあの日。

ヨーロピアンモードも行きすぎるとこうなる。何事も加減が大事。

学び

  • 意思表示はしなかった方が負け。違和感は飲み込まずに戦うこと。 
  • 語学力の問題ではない。ジェスチャーだけでもいいのでぶっ込むべし。   
  • 戦いを 挑む前に 要チェケら  しょうこ
Case 3. イヤホンという常識

これまたヨーロッパ内移動の際のフライトで、私の隣の隣にすわっていたスーツおじさまについて。

離陸するやいなや、スマホで海外ドラマを見始めたおじさま。その行為自体は全く問題ないのですが、イヤホンをしていないので音がダダもれなんです。

正直このときは、たった1時間半のフライトなので我慢しようと思いました。幸い静かなドラマなので、多少気にはなるけれどなんとか許容できる…

…と思っていたら、あっというまにドラマがクライマックスに差し掛かり、音量も激しさを増す。ガラスが割れる音、車が爆破される音、主人公の女性がきゃぁぁぁぁあああ〜〜と叫ぶ声など激しい展開に。気になって眠れん!

ちなみに、飛行機で周囲の騒音は防ぎようがないことなので、私は大抵そういう時は自分もイヤホンや耳栓をしてシャットアウトする方向の努力をするようにしています。が、この時はこのおじさまはおそらく本当に悪気がなくてナチュラルにやってしまっているタイプでは、という予感があり、ちょっと興味本位で話しかけてみることにしました。

私:「イヤホン持ってないんですか?」

おじさま:「イヤホン家に忘れちゃった」

私:「音、ぶっちゃけうるさいです…(切実な目)」

おじさま:「(驚!)ごめんなさい。君の迷惑になるなら音無しで見るよ」

とのことで、引き続きドラマを無音で見続けるおじさま。

普通、日本だったらイヤホンを忘れた時点でスマホでドラマを見るという選択肢自体が消滅すると思うんですがw 前提が違うんですね。

っていうかドラマって無音で楽しめるの?w

学び

  • 日本では普通に考えてありえないよね、という前提をピュアに飛び越えてくる相手がいる
  • 考えよう 私のふつうは ふつうなの? しょうこ

なんか書き始めたらこういう話はとめどなく出てくる…。思ったよりも長くなってしまったので、これくらいで今日はストップします。

ちなみに、ヨーロッパ、とかアジア、とか一括りにすることはできないので、あくまでも私の個人的な経験だとご理解頂ければ幸いです。丸4年ヨーロッパに住んでいても、今でもあごが外れそうになるほどの驚きコミュニケーションがあったりしますが、それもマルッと「ウケるわー」と思えるようになったことが成長の証でしょうか。

コミュニケーションやマネジメントスタイルをメンバーの背景(文化や歴史に紐づく)に適応させることの重要さ、国ごとの傾向を大枠で理解するのに、こちらの本は非常にオススメです。

あるある〜 が体系的に纏められていて分かりやすいので興味があれば是非。